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簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ32 売買④:売り主の担保責任・権利の契約不適合と期間制限ほか~

今回は,簡単・分かりやすい民法改正解説シリーズの第32弾です。

 

現在、第5回に分けて,私たちに最も身近な契約といえる「売買」に関する改正をみています。
前回、売買の中でも大改正されることになった「売主の担保責任」について、物の種類・品質・数量に関して契約不適合があった場合の4つの救済手段(履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除)(改正案562条~564条)を1つずつ説明・解説しました。

売買の第1回コラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ29 売買①:売買の改正概要・売主の義務~

売買の第2回コラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ30 売買②:売主の担保責任改正の概要~

売買の第3回コラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ31 売買③:売り主の担保責任・物の契約不適合~

 

売買・第4回の今回は、売り主の担保責任のもう1つのケースである権利に関する契約不適合の改正と、期間制限に関する改正、売り主の担保責任のその他の改正について、説明・解説していきます。

 

権利に関する契約不適合(改正案565条)

  • 前3条の権利は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

 

売買の目的である権利に関して契約不適合がある場合として、従来想定されていたケースの内、一部が他人の権利である場合、地上権等が付着している場合、抵当権等が付着している場合を、まとめて規定しています。

権利に関する不備としては、従来、売買の目的である権利の全部が他人の権利で、権利の移転に失敗した場合が想定されるケースに含まれていました。
けれど、それはただの債務不履行(履行遅滞)であって、追完や代金減額が問題とならないため、権利に関する契約不適合のケースからは外されています。
この場合、債務不履行の一般ルールに従って、解除か損害賠償で対応することになります。
なお、善意(他人の権利であることを知らないで)で他人の権利を売ってしまった売主の解除権(現行民法562条)は廃止されます。
前述のとおり、他人物の売主には権利を取得して買主に移転する義務があり(改正案561条)、知らなかったからといって解除を認めることはこの義務と矛盾するという考えです。

本条でも、売主に「契約の内容に適合した権利を移転する義務」があることを表明しています。
権利に関する契約不適合の救済手段として、前回コラムで説明した履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除という4つの救済手段が、すべてそのまま適用されます。

さらに、抵当権等が付着している契約不適合について、従来から認められていた費用償還請求権(現行民法567条2項)だけは、4つの救済手段とは別に認められる特別の救済手段なので、条文を残しました(改正案570条)。

 

売り主の担保責任の期間制限に関する改正(改正案566条)

  • 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。(後略)

 

従来、1年以内に権利行使しなければならないとされていた期間制限について、厳しすぎるとの声もあり、見直されました。

まず、期間制限が適用される対象を狭められました。
改正民法では、売り主の担保責任について、大きく「物の種類・品質・数量に関する契約不適合」と「権利に関する不適合」に分けられていますが、期間制限を受けるのは、「物の種類・品質に関する契約不適合」だけになりました
「物の数量に関する契約不適合」と「権利に関する契約不適合」は期間制限の対象から外れます。

さらに、1年という期間内にしなければならない行動も変更し、簡単にしました。
従来は代金減額や解除等の「権利行使」を1年以内にしなければならないという条文になっており、判例により権利行使の意思を明確に表明することが必要と解されてきましたが、「通知」で足りることにしました
通知の内容は、売主が対応を検討できる程度に契約不適合の種類と大体の範囲を知らせるものであることが想定されています(部会資料75A)。

期間内にすべき行動が「権利行使」となっている現行法では、同じく権利行使の期間制限である消滅時効との関係が問題となりましたが、改正案ではよりわかりやすくなります。
このルールの本質は通知義務とそれを怠ることによる失権ということになり、消滅時効とは両立します。
つまり、「物の種類・品質に関する契約不適合」は、1年以内に通知をすれば、権利が保存されて通常どおりの消滅時効が適用され、通知を怠れば失権します。
「物の数量に関する契約不適合」と「権利に関する契約不適合」には最初から消滅時効のみが適用されます。
※消滅時効の民法改正については、本シリーズのバックナンバーをご覧ください。

 

担保責任に関するその他の改正

危険負担の債権者主義(引渡時に移転)

改正案567条1項 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払いを拒むことができない。

本シリーズの危険負担の改正に関する記事で、特定物について権利を移転する契約をした場合、その滅失・損傷のリスクは債権者(売買なら買主)が負うというルールが現行法にはあり、強い批判を受けて改正案では条文(現行法534条)が削除されたことを述べました。
契約の瞬間からリスク負担が買主に移り、災害等で目的物が滅失しても代金は払わなければならないという結論に共感できないからです。
しかし、いつまでも永遠にリスク負担は売主のままというのも不合理です。
リスク負担が移転するのは、引渡しのタイミングとするのが適切だと多くの学説が考えてきました。
改正案は、534条をまるっきり廃止するのではなく、リスク移転のタイミングを引渡し時点に修正した上で、特定物の権利移転が最も典型的に問題となる売買契約のところで改めて規定しているのです。
したがって、債権者主義に関する534条は削除ではなく、修正+移動というのが正しいかと思います。
なお、リスクが移転する時点は、引渡しの時点だけでなく、買主が受領を拒絶するなどして引渡しの受領遅滞があった場合にもリスクが移転します(改正案567条2項)。
※危険負担の民法改正については、本シリーズのバックナンバーをご覧ください。

競売における担保責任(改正案568条)

裁判所の競売も一種の売買ですが、特殊性があるので特別の規定が置かれています。
従来は物の隠れた瑕疵についての担保責任のみが除外され、それ以外は競売にも適用されるというルールでした(現行法568条、570条但書)。
今回の改正では、これを物に関する契約不適合全体にも適用されるように拡大すべきだという議論がありましたが、実務の支障となるなどの反対意見により見送られ、結局これまでどおり「物の種類・品質に関する契約不適合」は対象外となりました(改正案568条4項)。改正は、担保責任ルールの整理に伴い必要となったマイナーチェンジのみです。

 

終わりに

以上が、売り主の担保責任の権利に関する契約不適合の改正と、担保責任の期間制限に関する改正、売り主の担保責任のその他の改正に関する、説明・解説していきます。
これまで、売買の第2回・第3回・第4回を使って、売り主の担保責任の改正を見てきましたが、次回は、売買の最後(第5回)として、売買に関するその他の改正みていきます。

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