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簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ1 消滅時効~

今回は,簡単・分かりやすい民法改正解説シリーズの第1弾です。

 

民法が,私たちにとても身近なルールを決めている法律であることは,シリーズ“ゼロ”でお話ししたとおりです。

(⇒簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ”ゼロ” 民法改正の意味~

このルールの内,契約を中心とした債権について,大幅な変更が行われます。

今回は,重要な変更点である消滅時効を,簡単・分かりやすく解説・説明していきます。

 

消滅時効とは

消滅時効とは簡単に言うと、権利をほったらかしにしたまま一定の期間が過ぎるとその権利が消滅してしまうという制度です。

この一定の期間のことを「時効期間」、時効期間のカウントがスタートする時点のことを「起算点」といいます。

消滅時効は,権利をほったらかしにしていると消えてしまう制度なので,ほったらかしにしなければ,権利は消えません。

ほったらかしにしない,つまり,一定の行為をとることで,時効のカウントがストップしたり、再びカウントが始まったりします。

 

今回の改正案では、時効期間の長さ、起算点がいつか、カウントのストップや再スタートのいずれについても、重要なルール変更が行われました。

 

改正前の民法の規定

まずは,改正前の民法の規定・ルールを簡単に確認しましょう。

 

・時効期間

改正前の民法では,債権(誰かに対してお金や物などを請求する権利)の消滅時効の期間は,原則として10年です(民法167条1項)。

例外として、職業別でこれより短い期間の消滅時効があります(同170条から174条)。

例えば,医師の診療報酬請求権の時効期間は3年、弁護士の報酬請求権は2年、飲食店の代金請求権は1年など、細かい区分がされています。

また、民法ではありませんが,商事債権(会社の取引等で生じる債権)の消滅時効は,5年という重要な例外もあります(商法522条)。

 

・起算点

改正前の民法の起算点は、「権利を行使することができる時」です。

例えば,代金に支払期日が定められている場合には、その支払期日到来後から起算することになります。

 

・カウントのストップ「中断」と呼ばれています)

改正前の民法では、請求、仮差押え・仮処分、相手方の承認があると,時効のカウントがストップします。そして,その後時効はリセットされて再スタートします。

これとは別に,時効の「停止」という制度もあります。

時効の停止とは,天災等の場合に時効のカウントがストップするけれど、その後リセットされずに再スタートするというものです。

 

以上のルールがどのように変更されるのでしょうか。

 

改正のポイント①〜起算点が2種類になり、時効期間の原則は5年または10年に

民法改正案では、債権の消滅時効期間は「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」となります(改正案166条1項)。

 

改正前の民法で定められていた「権利を行使することができるときから10年」(客観的起算点と呼ばれます。)というルールに,「債権者が権利を行使できることを知ったときから5年」(主観的起算点と呼ばれます。)という新たなルールが加わったことになります。

このルールが追加されたことで,民法の債権の消滅時効は,実質的に半減するといわれています。

先程の代金の支払期日の例で考えると、契約書で一定の支払期日を合意しておきながらその到来を知らずに過ごすということは考えられません。

つまり,「支払期日が到来した=権利行使できると知った」ときから,5年で,この債権は消滅することになるのです。

このように、取引の場面では多くの場合、主観的起算点と客観的起算点は一致することになると言われていて,その場合,5年で時効消滅しますので,改正前の民法からみて時効期間が半減することになるのです。

 

実質的に時効期間が半減するとなると,債権管理を見直す必要があるでしょう。

 

改正のポイント②〜職業別の短期消滅時効を廃止

上述した職業別の短期消滅時効制度については、従来から合理性に乏しい、分類が複雑な上に現代社会と合っていない等の指摘がなされてきました。そこで、廃止してシンプルに整理することになりました。

 

改正のポイント③〜商事消滅時効を廃止

商事消滅時効に関しても、法律上の区別が現代社会の実態と合わなくなってきているとの指摘があり、廃止されることになりました。

今回の改正は民法典の債権関係の規定が主な対象ですが、このように関係する周辺法規にも改正は及んでいます。

 

改正のポイント④〜人身損害の場合の特例

債権は契約等の取引行為からだけではなく、不慮の事故からも発生します。

不慮の事故の内,人身事故の場合の損害賠償請求権については被害者保護の必要が高いことから、改正案は時効期間の例外を設け、主観的起算点から5年、客観的起算点から20年の長期間の消滅時効にかからせることとしました(改正案167条、724条、724条の2)。

 

なお、改正前の民法では,不法行為の損害賠償請求権について,「20年」の除斥(じょせき)期間(中断等が認められない)にかかると解されてきましたが、改正案はこれを変更して消滅時効であることを明記しています。 

 

改正のポイント⑤〜完成猶予でストップ、更新でリセット

従来の時効の中断と停止は、再スタート時にカウントがリセットされるかどうかが異なる別々の制度でした。

改正案では、ストップするものは全て「完成猶予」リセットされて再スタートするものは「更新」再構成されます。

従来の中断事由・停止事由は基本的に引き継がれていますが、中断事由だった「仮差押え・仮処分」だけは、変更されて更新無しの完成猶予事由になりました(改正案149条)。

また、従来は2週間という超短期の停止事由だった「天災等」については、完成猶予期間を3ヶ月に長期化しました。

 

改正のポイント⑥〜協議による完成猶予 

新しい完成猶予事由(更新無し)として、「権利についての協議を行う旨の合意」が加わりました(改正案151条)。

この新ルールによって,話し合いの余地がありそうなのに時効を止めるためだけに訴えを提起せざるをえず、円滑な話し合いが難しくなってしまうといったケースを回避できます。

なお,この合意は書面でしなければなりません。

 

終わりに

以上、今回は消滅時効に関する改正内容をチェックしてみました。

改正後の消滅時効が適用されるのは、改正民法の施行日後に発生した債権のみですので(改正案附則10条)、その点は注意してください。

 

 

 

民法改正後は,時効期間が実質的に短くなることで,これまでの時効・債権の管理では,時効が完成してしまうリスクがあります。このようなリスクが現実化しないよう,民法改正前から,準備を整えておくとよいでしょう。 名古屋駅前の法律事務所,弁護士法人中部法律事務所では,弁護士が法律改正等についても日々研鑽を積み,身近でよりよいサービスを追求しています。 当法律事務所では,名古屋エリア(愛知・岐阜・三重)の中小企業・個人事業主の方の顧問弁護士を,月額1万5000円~の安心・低価格で,お引き受けしています。 民法改正の直前・直後は,ご相談希望が混みあう可能性があります。今後の時効管理についてご相談・ご不明の点は、当法律事務所弁護士にご相談ください。

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