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簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ6 危険負担~

今回は,簡単・分かりやすい民法改正解説シリーズの第6弾です。

 

民法が,私たちにとても身近なルールを決めている法律であることは,シリーズ“ゼロ”でお話ししたとおりです。 (⇒簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ”ゼロ” 民法改正の意味~) このルールの内,契約を中心とした債権について,大幅な変更が行われます。

 

今回は,重要な変更点である「危険負担」を,簡単・分かりやすく解説・説明していきます。

危険負担は、前々回のテーマだった「債務不履行」と、混同しやすいかもしれません。

債務不履行にも少し触れながら、危険負担の改正点について、簡単・分かりやすく解説・説明していきます。

 

 危険負担の重要な改正ポイント

従来批判されてきた債権者主義の規定が削除されました。 この規定の削除は、特に売買のケースで影響が大きいと思われます。

 

 危険負担とは

危険負担という用語は日常会話にあまり出てこないと思いますが、契約当事者の帰責事由によらない何らかの原因で、契約当事者の一方の債務の履行が不可能になったトラブルの場合に問題となる概念で、当事者の利害を大きく左右するものです。

 

例として、美術品の売買を考えてみます。

契約成立後、買主が代金を支払う前、商品は第三者の倉庫で保管されている状態で、倉庫が近隣からの延焼で焼失して商品も失われてしまったとします。

売主にとって、目的物引渡義務という債務が履行不能になってしまいました。この場合、買主の代金支払義務はどうなるでしょうか。

現行民法での答えは、特約がない限り消滅しない、です。

つまり買主は失われた商品の代金を支払う必要があり、履行不能のリスクを負担することになります。

 

このように、一方の債務が履行不能になったにもかかわらず、それと対価的な関係にある債務(反対債務といいます)を履行しなければならないという結論のことを、債権者が危険を負担するという意味で「債権者主義」といいます。

 

これに対し、反対債務を履行しなくてよくなるのが「債務者主義」です。

現行民法534条により、「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したとき」は債権者主義で処理されるのです。主に売買契約がこれに該当することになります。

 

一方、その他の債務が契約成立後に履行不能になった場合には、536条が適用され、当事者双方に帰責事由がない場合は債務者主義、債権者に帰責事由がある場合は債権者主義で処理されます。

 

 債権者主義の不合理性

しかし、534条による上記の例の結論は買主にとってあまりにも酷です。

契約を取り交わしたその瞬間に危険が全面的に買主に移転するというのは、通常の当事者の意識に合致していないと思われます。

また、もしも焼失が契約成立の直前だったとすれば、債務は初めから不可能だったことになり(原始的不能)、そのような場合には契約は無効で代金支払義務も発生しないと考えられています。

それなのに、たまたま契約成立の後に不能になった(後発的不能)ことで逆の結論になるというのはバランスを欠いています。

 

危険負担の一般原則は、債務者主義に変更

このように、現行民法534条に合理性がないことをほぼすべての学説が認めている状況でした。

 

そこで、改正案では534条を削除して536条の債務者主義を危険負担の一般原則としました。これにより、上記の例では結論が逆になり、買主は代金を支払わなくてよくなります。

 

引渡しによる危険移転

ただし、元の534条と類似した規定が売買契約のところに新たに設けられたので、注意が必要です。

 

改正案567条1項 :

売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

 

この改正の趣旨は、元の534条の解釈として、債権者主義による不合理な結果を制限するため、危険の移転時期を契約成立時ではなく目的物の引渡し時まで遅らせるべきだという学説が有力だったこと、及び国際売買を含む契約実務において危険の移転時期は引渡し時と合意することが一般的であることを受けて、これを典型的な場面である売買契約の危険移転時期に関するルールとして明文化するものと説明されています(部会資料75A)。

つまり、534条は合理的なレベルにまで内容を制限された上で、規定の位置を売買契約のところに移動されたと考えてもいいと思います。

 

反対債務は消滅しなくなった

改正案においては、当事者双方の責めに帰することができない履行不能について、ほとんどの場合債務者主義が適用されることとなります。

ただ、債務者主義の中身が従来と同じではありません。

 

現行民法:履行不能により債務が消滅 → 反対債務も消滅

改正案: 履行不能により債務が消滅 → 反対債務は存続するが履行拒絶権発生  

 

反対債務を履行しなくてよい(冒頭の例では買主が代金を支払わなくてよい)という結論は同じでも、理論的には大きな違いがあるのです。

この理由は、債務不履行による契約解除に関する変更と関係しています。

解除の要件として、従来は債務者の帰責事由が必要とされていましたが、改正案はその要件を抜いて、債務者に帰責事由がなくても解除できるという新しい解除制度を採用しました。

その結果、債務者に帰責事由のない履行不能の場合、危険負担の問題でありながら解除もできることになります。

従来、債務者に帰責事由があれば債務不履行が成立するので解除によって反対債務を免れればよく、債務者に帰責事由がなければ危険負担により反対債務が当然消滅することで反対債務を免れられる、と棲み分けがされていたのに、その棲み分けは成り立たなくなります。

そのまま重複させると、消滅しているはずの債務を解除によってさらに消滅させることができるというおかしなことになります。重複を避けるため、解除しかできないことにするか、危険負担しか選べないことにするかという一元化も検討されましたが、いずれも問題が残るということで、危険負担に伴う当然消滅という効果を改め、反対債務は消滅しないが履行請求を拒むことができるという履行拒絶権構成を採用したものです(部会資料79−3)。

 

 終わりに

以上、今回は危険負担について、改正を説明してみました。聞きなれない言葉が多く、難しい内容だったかもしれません。

 

 

 

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